障がいのある人たちのこと
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障がいのある人たちのこと
カフェベーカリーぷかぷかでは障がいのある人たちが働いています。
「カフェベーカリーぷかぷか」では障がいのある方が働いています。主に知的障がいといわれている人たちで、人とのおつきあいが、あまりうまくできなかったり、おしゃべりがあまり上手でなかったりしますが、そのできないこと、苦手なことをはるかに超える素晴らしいものを彼らは持っています。
その素晴らしいものは彼らとおつきあいする中で少しずつ見えてきます。
街の人たちに彼らとすてきな出会いをしてほしい、そんな思いで「カフェベーカリーぷかぷか」を作りました。
ぷかぷかへの思い
2010年4月に霧ケ丘グリーンタウン(緑区)の商店街に障がいのある人たちの働くパン屋さん「カフェベーカリーぷかぷか」を開きました。「ぷかぷか」には私のいろんな思いが渦巻いています。
いっしょに生きていった方が「得!」
私は養護学校で30年働いてきました。働いてきた、というよりも、彼らと30年付き合ってきた、という方が実感に近い気がします。
自分の中にある人間のイメージを大きくはみ出す人も多く、初めのころは戸惑うことばかりでした。でも、いろいろつきあってみると、私たちにはない,なんともいえない魅力をたくさん持っていて、この人たちとはずっと一緒に生きていきたいと思うようになりました。
一緒に生きていった方が「得!」という感じです。彼らと一緒にいると毎日が楽しいからです。心安らぐものがあるからです。そして、教えられるものがたくさんあるからです。
宝子
昔、私がまだ学生の頃、胎児性水俣病の子どもを抱きながら、「この子は宝子ばい」と言っていたお母さんがいて、その「宝子」の意味がどうしてもわかりませんでした。重い障がいをもった子が、どうして「宝子」なのか、ということです。でも、障がいのある子どもたちと30年付き合ってきた今、「宝子」という言葉に込めたお母さんの思いが痛いほどわかるようになりました。
ぎすぎすした息苦しい今の世の中にあって、ただそこにいるだけで心安らぐような雰囲気を作ってくれる彼らの存在は、やはり「宝」といっていい存在だと思うのです。そういう「宝」が、かつてあったおおらかさがなくなり、どんどん息苦しくなっていく今の社会には必要なんじゃないか、私はそんな風に思います。
街の人たちに、そんな「宝」のような存在に出会ってほしい。彼らと一緒に街の中でパン屋を始める理由のいちばん根っこにはそんな思いがあります。
養護学校卒業後の行き場
養護学校は今過大規模化の問題で、生徒の数が異常に増えています。生徒が増える原因は就学時の振り分けの問題とか、自然環境悪化の問題とか、食べ物の問題とか、いろいろ原因は考えられますが、そのことについてはここではふれないでおきます。生徒が増えている現状にどう向き合うのか、という点に焦点を絞ります。
学校では教室が不足するため、空き部屋を教室に変更したり、県立高校の空き教室などを使って分教室を作ったり、教員を増やしたりして対応しています。教室が不足する問題はそのまま、卒業後の行き場が不足する、という問題になります。
卒業後の行き場を増やすことは、学校で教室を増やすことに比べれば、その何倍もの人的エネルギー、お金、時間が必要です。そして彼らの人生の中で占める割合を考えるならば、卒業後の行き場の問題の方がはるかに大事です。
そういった状況の中で、「カフェベーカリーぷかぷか」を作る試みは、養護学校の過大規模化の問題にストレートに答えるものです。あーだこーだと議論するのではなく、とにかく彼らの行き場を具体的に一つ作り出すのです。
「ぷかぷか」で働くことのできるのは、わずかに20人です。でもこれをきっかけに第2,第3の「ぷかぷか」ができれば、彼らの働く場が少しずつ増えて行きます。
そのための手がかりになるように、「カフェベーカリーぷかぷか」のホームページには、今までやってきたこと(クリックして下さい)、その時々の思い、主な書類などをすべて書き留めています。これを読むと、どういうことを、どういう手順で進めて行けば、こういう場が立ち上がって行くのか、が具体的にわかるようになっています。ぜひ参考にして欲しいと思います。
ただ、あまり深刻にならず、大変さをも楽しみながら作って行くのがコツです。
彼らの働く場=生きる場を作ることは、そのまま私たち自身の生きる場を作ること
私は今、すっごく楽しいです。こんなに大変で、こんなに楽しい日々が来るとは思ってもいませんでした。彼らの働く場=生きる場を作ることは、そのまま私自身の生きる場を作ることなんだとあらためて思います。ぷかぷかでいっしょに働いているスタッフはもちろん、「ぷかぷか」をさまざまな形で支えてくれているたくさんの人たちにとっても。
自立生活ができる給料
福祉施設の工賃が安すぎる現状の中で、年金と合わせて自立生活できるくらいの給料の払える事業所にしたいと思っています。パンは単価が安いので、そこから生活費を稼ぎ出すのはなかなか大変です。でも、経営戦略をしっかり立てて運営していけば、それなりの収益はでるはずです。
安心して食べられるおいしいパンを丁寧に作ること、ここにしかないパン、売れるパンをいつも研究すること、販路をしっかり確保すること、どうやったら売り上げが増えるかをみんなで必死になって考えること、さまざまな角度からプロの目線を入れ、常に評価してもらうこと、そして何よりも仕事を楽しむこと。そういったことを実践する中で、何とかいい給料を払いたいと思っています。
NPO法人ぷかぷか理事長
高崎 明