ロはロボットのロ
ロはロボットのロ
オペラの内容
主人公の名前は「テト」、ロボットです。ロボットといっても空は飛べないし、走るのも苦手。鉄棒もできないし、算数も嫌い、ピーマンも苦手、おまけに犬もこわい!でもテトにはひとつだけ得意なことがあります。それは、だれよりもおいしいパンを作ることです。
(テトが働くパン工場。おいしいパンが毎日たくさん作られている!)
テトはウェストランドでママ・モンローやたくさんのパンロボットたちと一緒に楽しくパンを作って暮らしていました。ところがある日、毎日1,000個作っていたパンが、999個しか作れなくなり、次の日には998個、その次の日には997個と、作ることのできるパンの数が少しずつ減ってきました。これはどこか故障したのではないかと、テトを作ってくれたドリトル先生を訪ねることにしました。ドリトルで先生は遠いイーストランドに住んでいます。テトは先生を訪ね、たったひとりで旅に出ることにしたのです。
(パンがうまく作れなくなったテトはイーストランドを目指して旅に出る)
イーストランドは今、魔女ノーマとその娘ジーン(わがままな女王)、金に目がないマニーが支配しています。テトはココという女の子と友達になります。ココの父親は腕の良いパン職人。でもマニーたちの仕掛けた借金でココ親子は苦しんでいました。テトは彼らを助けるためにパンを作ります。パンはまたたくまに売れて一時は難を免れました。しかし、今度はテトのパンのおいしさに執着する女王のたくらみで、さらなる苦難がふりかかってきます。テトは自分のエネルギーを全て振りしぼって困難に立ち向かいます。エネルギーを使い果たし、鉄のかたまりになってしまったテトに向かって泣き崩れるココ。でもココはあきらめません。ドリトル博士を捜しだし、「わがままな人間のためには、もうニ度とロボットを作ったり直したりはしない」と宣言する博士に、「テトを直して」とお願いします。
「テトのパンはみんなをしあわせにするんだよ。」
というココのことばに気持ちがゆらぐ博士……。
「テトのパンはみんなをしあわせにするんだよ。」
ドリトル博士はついにテトを直すことを約束します。
ココは今日も元気にパンを作り続けています。いつかテトが作るパンのようにおいしいパンを作ることを夢見て。そしてテトが元気になって帰ってくることを夢見て……。
(テトが帰ってくるのを待ちながら、元気に今日もパンをつくるココ)
オペラ『ロはロボットのロ』は、音楽でお話が進んでいきます。楽しい歌がたくさんあります。思わず口ずさみたくなる歌も。それから、歌が会話になっているところもあれば、合唱もあります。ロボットたちの不思議なダンスもあります。8人の出演者が30人以上の役を演じます。1台のピアノがオーケストラに負けないくらい、いろいろな音を出して、登場人物の嬉しさや悲しさや悔しさ、そして喜びを表現します。
スピーディーな場面展開、とてもコンパクトにしてダイナミック。オペラのさまざまな要素がみんな入っています。そして、とても懐かしい気持ちにさせてくれるオペラです。
オペラの最後に歌われる歌
「テトのパンは あ、 あいうえおの あ、 忘れていた青空の あ」
オペラを見た帰り道、ぜひ歌ってください。
人はだれでもいつでも、自分にとって大切で、絶対守りたいものがあります。どんなにちっぽけな夢、希望、愛であっても。それを守るためなら、子どもだって大人だって、どんなに弱い人間だって一生懸命立ち上がっていけるんだと思います。
自分にとって大切なものは何だろうって考えてほしい。そしてこの作品を、生きることへのエールみたいに思ってもらえたら、と思うのです。